2012年4月30日月曜日

やっとここから始まるんだなー


里山という概念を意識して追いかけだしたのは10年余り前からだ。爾来いろいろな本を読み、いろいろな人に教えていただいた。

最初の教科書は、新田穂高さんの「自然の暮らしがわかる本」だ。結局ここにすべてが書いてあったと言っていい。

新田さんはその本を書く数年前から、家族四人で茨城県八郷の古民家に住んでいた

古民家、薪ストーブ、コンポスト・トイレ、微生物浄水などなど、実践している人とその方法が紹介されていた。

後に私は新田さんにお会いし、私の「里山暮らしの会」の主催した里山暮らし講習会の講師をお願いすることとなる。

自然農については、まず、「賢治の学校」で知り、そこから、沼津の高橋浩昭さんを紹介していただいた。高橋さんにも里山講習会で講義をお願いして、その後私自身も自然農をご指導いただいた。

長野県伊那谷の建具職人、有賀恵一さんには、日本人が古来から利用してきた90種ににも及ぶ木のすばらしさ、それを生かす木工技術のすばらしさを教えていただいた。私は有賀さんの作る無垢材の家具に魅せられ、一時期、楽天で販売した

そう言えば木工に興味を持って家具職人に憬れたのは、その二十年ほど前のことだ。柿谷誠さんの「KAKIのウッドワーキング」という本で木工の基礎を学んだ。が、その頃、仕事が忙しくて時間が無く、また木工作業用のスペースも無かったので、趣味として続けることが出来なかった。

遊山房の二宮倫行さんに紹介されて日本民家再生協会に入会したのは2001年か2002年のことだ。

民家の学校も卒業した。四期生だ。O設計の大沢匠さんが校長先生だった。古民家についてさまざまのことを楽しく学ばせていただいた。

授業のうちとりわけ印象に残ったのが大平(おおだいら)の民家合宿だ。古い、汚い民家で薪での煮炊き、風呂焚きを体験した。その楽しさは、その後も忘れられなかった。月夜のナイトハイクのすばらしさも強烈だった。

協会では、民家トラスト委員会委員長(当時)の長谷川和男さんに散々頼まれて、結局理事も勤める羽目となった。10回は断ったと思うが、ついに根負けして引き受けたのだ。二年間民家活用委員会を運営した。

委員会ではいくつもイベントを企画開催したが、一番おおがかりだったのが秋田の大森町で開催した「大森町赤レンガ蔵の活用を考える」会だ。リンボー先生こと林望さんに講演をお願いした。林さんは協会の特別会員だったが、それにしてもとんでもなく安い講演料で引き受けてくださった。当日は、驚く無かれ、秋田まで自家用車で駆けつけてくれた。(このイベントの顛末は是非里山で行こうよ!の「赤レンガは招くよ」でお読みいただきたい。)

始めは古い民家を現代風の便利な建物に改修することに魅力を感じていたが、次第に、昔の自然親和的な暮らしを実現する場としての古民家への憬れが支配的になって行った。

民家の学校のプログラムの中で、もう一つ印象的だったのが間伐体験だ。小森谷さんの経営する群馬県勢多郡東村の山林で、山と木々の神秘的な力に圧倒された。

民家協会で知り合ったひでしな商店の小林秀樹さんには、古材販売業の一端を実地で教えていただいた。数ヶ月の間、小林親方について、週に一回古材商の見習いを体験させていただいた。強く辞退したにもかかわらず日当まで下さった。小林さんのご親切には本当に感謝している。

信州大学教授(当時)の中本信忠先生のウェブサイトで緩速濾過のすばらしさを知った。生物の力を利用した自然の浄水機能のすばらしさは、手作りの小型浄水器でも、安全でおいしい水を作ることができることだ。憬月荘でも勿論実践する計画だ。

心身統一合気道を始めたのは1999年だ。成心館道場の小原英雄先生のもとで、今も心身を統一し天地と一体となることを学んでいる。

鋸谷式間伐を最初に教えてくれたのは、やはり「自然の暮らし・・・」だったが、詳しくは、大内正伸さんの「これならできる山づくり」で学んだ。鋸谷式間伐の基本的な考え方が、川口由一さんの自然農の思想に通ずることを発見して快哉を叫んだが、果たせるかな、大内さん自身自然農を実践していたのを知ったのはその後随分たってからだ。大内さんの最近の本では、「植えない森づくり」がおすすめ。

昨年の3月ごろ、本屋で見かけて久しぶりに大内さんの本を買った。それが「山で暮らす愉しみと基本の技術」だ。木の伐り方、草の刈り方から、石垣の積み方、沢水水道の管理技術、小屋の建て方、囲炉裏の作り方、薪での炊事、暖房あれこれまで、すべて具体的に書いてある。

これを読んで、「自然の暮らしがわかる本」以来追い続けて来た、里山暮らしの全体系の復習をしたように感じて、改めてそのような暮らしへの憧れを確認した。そして、その直後、憬月荘にめぐり合うことが出来た。

憬月荘を手に入れてから、裏山の手入れについて、大内さんにメールで相談したところ、間もなくアドバイスを頂いた。

「きものを着て/古民家に住んで/自然農で米野菜を作り/薪で炊事、風呂焚き、暖房し/緩速砂生物濾過器で給水し/詩を書き/毎日客を招いて/農作業を手伝ってもらうかわりに/簡単な料理と旨い酒を振舞って/月を観ながら語り明かす・・・そんな贅沢してみたい」

とブログ説明に書いて「憬月庵雑記」を始めたのが2003年の9月のことだ。そこで、私の里山生活系普及活動のあれこれを記録した。しかし、決定的な不足は、私自身にそれを実生活で実現するためのステージが無かったことだ。

昨年3月頃、還暦まであと2年半となって、房総での古民家探しを再開した。一度引退に失敗してから、6年程が経過していた。その前後で買ったのが「森で暮らす・・・」だ。

数年前、盛んに房総の古民家を物色していたときに、散々お世話になった不動産屋さん、田舎暮らし・千葉房総ねっと株式会社のサイトをまた真剣に見始めて間もなく、憬月荘がそこに載った。久しぶりに社長の武田さんに連絡して見せてもらった。そしてすぐ購入を決めた。

最初の実見に同伴していただいたのが、武田さんに紹介いただいた熊家という工務店を経営する岩熊さんだ。彼のアドバイスのおかげで、即決できたと思う。

床の不陸矯正工事、柱の入れ替え、土間部分の壁床撤去、下屋の修繕は、岩熊さんにやっていただいた。

このほかにも沢山の方々にお世話になった。感謝に絶えない。

やっとここから私の里山暮らしの実践が始まるんだなー、と今しみじみ思う。
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